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2017.10.01
Column

背中で引っ張る闘将【#ピックアッププレイヤー】

TOKYO CITY F.C.は1日、東京都社会人サッカーリーグ3部の今シーズン最終節に臨む。2部昇格が非現実的なものになったとしても、希望を持ち続けるためにGAKUDANREN戦を落とすわけにはいかない。



 この試合に向けて特別な想いを抱く選手もいる。今シーズンからCITYに加入した中村勇貴は、昨年までGAKUDANRENの一員として戦っていた。古巣との直接対決を前に「最初は同じリーグで戸惑いもあった」と明かすが、もはやCITYの背番号10として戦うことに迷いはない。


 山形県国体選抜歴を持つスキルフルなMFである中村は、三浦行広前監督とともに加入した新戦力だった。CITYの選手たちの熱意に押され、GAKUDANRENからの移籍を決意した背景がある。


 そして、新加入ながら背番号10と副キャプテンを任された。当然ピッチ内外で周囲の信頼も厚く、明るい性格と激しく戦う姿勢はチームの士気をグンと高めた。中村自身「いきなり入って10番というのは周りの人からどう思われるのかわからなかったけど、自分を追い詰める意味ではよかった」と振り返る。


 しかし、6月上旬にまさかの事態が中村を襲う。練習中に負傷し、左足首の剥離骨折で長期離脱を強いられた。中盤で存在感を発揮し始め、チームも連勝中、さらに毎週のようにリーグ戦が組まれて日程がどんどん進んでいく、最悪のタイミングでの負傷となってしまった。


「ショックだったね。チームに対して申し訳ないと思ったし、だから早く復帰しようと思った」


 中村が戦線を離脱している間、代役として中盤の底に入った溝辺基が2試合連続で決勝ゴールを挙げるなど結果を残す。CITYは連勝を重ね、絶好調を維持していた。自分がいなくてもうまく回っていくチームを見て焦りはなかったのだろうか。


「自分の代わりにモトくんが入って、2戦連続でしっかり決勝点を取っていたし焦りはあったけど、でもそこは負けない気持ちがあるから。焦りじゃなくてライバル心が強かった。チームの中で見る雰囲気と、外で見る雰囲気は違ったし、それを外で見られたのは俺の中で大きいと思う。俺がいたらもっとできるというのもあったし、俺がいないから選手間の距離が縮まったというのも感じた。良くも悪くもね」


 急ピッチで治療を進め、中村が復帰したのは7月17日の慶應BRB戦だった。直前の杉並ジュエントスSC戦で引き分け、連勝が8でストップ。2部昇格のためにひとつも星を落とせない中で迎えた、昇格を争うライバルとの直接対決である。


 結果は1-4。完敗。中村はキャプテンマークを巻いてフル出場したが、チームを勝利に導くことはできなかった。



「BRB戦は、チームの雰囲気を中から変えられなかった俺も悪いと思うし、それこそ前半の決定機とかも決めていればまた流れは変わったんだろうし。負けたのには自分にも責任がある」


 8勝1分1敗。この時点で残していたのはGAKUDANREN戦のみで、今シーズンの2部昇格はかなり厳しくなった。12チーム中1チームしか昇格の権利を得られない上、各チームと1回総当たりのため、1敗の重みは計り知れない。ひとつでも勝ち点3を落とせば、その可能性は一気に下がってしまう。


 そういった事実は頭にあったものの、最後までファイティングポーズをとり、上位争いをしていた慶應BRBやGAKUDANRENにプレッシャーをかけ続けなければいけなかった。そんなある時、中村から発せられた一言でチームが一瞬凍りついた。


「もう無理だよ」


 1敗でもすれば2部昇格は難しい、という現実が重くのしかかる。「2部昇格」という共通の目標を失い、チームの団結が崩れかけた。


「あれは俺が言うべきじゃなかった。俺があそこで言ったのは、2部に行ってもあれ以上のチームはいるし、1年で戻ってきたら意味がないと思ったから。自分たちはずっと勝ってきて『絶対に昇格できる、強い』という気持ちがあった。でもその気持ちがあまり好きじゃなくて。もともと1敗の大事さに対して甘くて、強い相手に対して最初から勝てないという気持ちが伝わっていたから、これではメンタル的に昇格できないんだろうなと思って、俺は厳しいことを言ったつもりではいる。でも副キャプテンの立場からして、『無理だ』と言ったのは後悔した。悪いなと思ったし、深く反省している」


 慶應BRB戦の結果を受けて三浦監督が退任。リーグ最終節のGAKUDANREN戦は深澤佑介新監督を迎えての初陣、次なる戦いへ向けたリスタートでもある。


 チームメイトから「闘争心むき出しのプレーが他の選手にも影響を与えている」「誰よりもプレーに感情を込めていて、チーム全体が戦えるようになった」「本気で上を目指す姿勢を見せていい雰囲気を作ってくれる」と信頼を寄せられる背番号10は新体制でも中心的存在になっていくはずだ。


「プレーで鼓舞する。このチームなら勝てる、勇貴さんがいるから勝てるとなりたい。まずはGAKUDANREN戦に絶対に勝つこと。さらにカップ戦でしっかり優勝して、東京カップに出て、そこで格上の相手を倒したい」


 古巣GAKUDANREN戦で勝利に貢献し、周囲からの信頼に応えられるだろうか。中村は背番号10の責任や重みを、この1年を通して深く理解しただろう。チームの誰もが、その大きな背中を見て戦っている。